我が国の農業構造の変化を多様なグラフで紹介されています。

 我が国の農業は、国⺠⽣活に必要不可⽋な⾷料を供給する機能を有するとともに、地域の経済やコミュニティを⽀え、国⼟保全等の多⾯的機能を有しており、我が国の経済・社会において重要な役割を果たしています。
 他⽅、我が国の農業・農村は農業者や農村⼈⼝の著しい⾼齢化・減少という事態に直⾯していますが、令和3(2021)年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡⼤による影響の継続に加え、ロシアによるウクライナ侵略等を背景として、⾷料⾃給率の向上や⾷料安全保障の強化への期待が⼀層⾼まっており、そのような中で、我が国農業においては持続可能な農業構造の実現に向けた取組がますます重要となっています。
 このため、今回の特集では、そのための道標となるよう、2020年農林業センサスの公表等を踏まえ、我が国の農業構造のこれまでの中⻑期的な変化をテーマに、品⽬別、地域別も含めた分析を⾏いました。以下では、その内容について紹介します。

農林水産省「変化する我が国の農業構造」⇐PDF

(1)基幹的農業従事者

基幹的農業従事者は減少傾向、令和2(2020)年は136万人

65歳以上の基幹的農業従事者が70%、49歳以下の割合は11%

令和2(2020)年の20歳から49歳層は平成27(2015)年の15歳から44歳層に比べて2万2千人増加

若年層の基幹的農業従事者は酪農や施設野菜で大きい割合

(2)農業経営体

令和2(2020)年の農業経営体数は108万経営体で、96%が個人経営体

主業経営体、法人経営体の経営する耕地面積の割合の合計は増加傾向

団体経営体では、法人経営体が稲作部門を始めとして増加傾向

耕種部門では、特に稲、麦類、豆類で団体経営体の割合が増加傾向

畜産部門では、法人化がより進展し、採卵鶏や豚で飼養頭羽数の9割が法人経営体

いずれの農業地域型においても法人経営体が増加

いずれの農業地類型においても法人経営体の経営耕地面積が増加

(3)農地

農地面積は減少傾向、令和3(2021)年は435万ha

(4)規模拡大

1農業経営体当たりの経営耕地面積は、借入耕地面積の増加もあり、拡大傾向

15年間で麦類・豆類の作付(栽培)面積、豚、採卵鶏の飼養頭羽数は2倍以上に拡大

1農業経営体当たりの経営耕地面積は、平地農業地域や北海道、東北、北陸で大きい

農業経営体全体では0.5haから1ha層が大きく減少の一方、10ha以上層は増加

法人経営体では、農業経営体全体より大きい規模の層が多く、かつ、増加傾向

平地農業地域において規模拡大が進展、特に法人経営体ではその傾向が顕著

(5)農業所得

販売金額が3千万円以上の経営体数は増加

主業経営体1経営体当たりの農業所得は415万円

法人経営体1経営体当たりの農業所得は323万円

水田作では規模が大きいほど所得は大きく、土地生産性が高い傾向

露地野菜作では規模が大きいほど所得は大きいが、20ha以上層では低下

酪農でも規模が大きいほど所得は大きい傾向

(6)品目構成

農業総生産出額は米の割合が減少、畜産や野菜の割合が増加

都道府県別農業産出額1位の品目が変化

作付面積では米は減少傾向、麦・大豆は微増傾向

米以外の産出額が大きい県の方が1経営体当たりの生産農業所得も大きい

1農業経営体当たりの生産農業所得は近年増加傾向

(7)今後に向けて

 今回、我が国の農業構造のこれまでの変化について分析を進めたところ、我が国農業の持続的な発展のためには、若年層等の農業従事者の確保・定着と併せて、それらの農業従事者⼀⼈⼀⼈がこれまでに⽐べてより⼤きな役割を担っていくことが必要となっていることがうかがえます。
 このような中、経営耕地⾯積に占める主業経営体と法⼈経営体の割合が増加傾向であり、1経営体当たりの経営規模も拡⼤し、⼤規模層では農業所得も⼤きくなっていることから、基盤整備による⼤区画化や農地の集約化、経営データの活⽤等のスマート農業の取組を促進すること等と併せ、法⼈化・規模拡⼤の取組は今後とも重要であると考えられます。その⼀⽅で、経営耕地⾯積に占める65歳以上の農業従事者の割合は依然として⼤きく、地域の農業を維持する観点からは、これら農業従事者の果たす役割も引き続き⼤きいと考えられます。
 また、農業⽣産の品⽬構成においては、⽶の割合が減少し、畜産や野菜の割合が増加傾向にあり、若年層の農業従事者の割合が畜産や野菜の部⾨で⾼くなっていること、さらに1経営体当たりの⽣産農業所得は⽶以外の産出額が⼤きい県の⽅が⼤きいことから、需要の変化に応じた⽣産の取組が今後とも重要であることがうかがえます。
 このようなこれまでの変化の傾向は、地域ごとに様々な事情もある中での現場の⽣産者や地⽅公共団体等の関係者による取組が反映されたものであることから、今後の持続可能な農業構造の実現に向けての⼤きな⽅向性を⽰す道標となると考えられます。

農林水産省「変化する我が国の農業構造」⇐PDF

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r3/farmer.html)